白色系アイシャドウの発色要因を評価できます
白色系アイシャドウにはパール顔料が広く用いられており、その発色性が製品の特性に大きく影響します。今回は、人工皮膚に塗布した際の白色度が異なる2種類の白色アイシャドウA(白色度:高い)とB(白色度:低い)〔図1、表1〕について、顔料の形態に着目して発色性の違いを評価した事例を紹介します。
2種類のアイシャドウの発色要因評価
はじめに、人工皮膚に各アイシャドウを同量ずつ塗布した際の光学顕微鏡像を比較しました〔表2(a)〕。
アイシャドウAでは、色味、粒径ともに均一な約15 µmサイズの鱗片状成分が分散する様子が認められました。
一方、アイシャドウBでは白色成分や黄色成分、半透明成分などが存在し、色味が不均一で粒径も1~200 µmとばらつきがありました。
次に、FIB加工により断面加工(薄片化)した状態の断面TEM-EDX分析を行ったところ、アイシャドウA、Bどちらも、酸化チタンがマイカ(雲母)を被覆する形態が確認されました〔表2(b)〕。それぞれの膜厚は表1(b)のとおりで、酸化チタンはアイシャドウAの方が薄く均一だった一方で、アイシャドウBでは酸化チタンの厚みがさまざまでした。一般的に酸化チタンは顔料として用いられ、その膜厚が色味に影響を与えることが知られているため、酸化チタンによる被覆の有無や膜厚の不均一性が発色性の異なる要因と推測されます。またアイシャドウAの方がマイカの厚みが薄いことから、顔料が肌の上で容易に重なり合い、肌を広範囲で覆うため発色性が高くなると考えられました。
最後に、酸化チタン層の表面SEM分析を行ったところ、酸化チタンは粒状に存在し、アイシャドウAでは粒径が均一であるのに対してアイシャドウBでは不均一であることがわかりました〔表2(c)〕。表面形状は光の反射や屈折に寄与することから、発色性に影響を与える可能性があります。
以上の結果から、アイシャドウAはアイシャドウBに比べ白色度が高い理由として、顔料の粒径・構成成分の厚み・表面形状が均一であることがあげられます。