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UVアクリル硬化物の重合度や分子量分布に関する情報が得られます

UV樹脂は重合時に溶剤を必要とせず、また反応後の脱溶剤工程などが不要であるため、脱溶剤技術、エネルギー削減技術として改めて注目されています。UVアクリル樹脂は、各種アクリルモノマーに架橋剤となる多官能アクリルモノマーと光重合開始剤が一般的に配合されており、UV光を照射することで重合と架橋反応が同時に進行します。したがって、重合物の一部は架橋により不溶化するため、光重合反応でどの程度重合が進行しているかを計測することは困難でした。
そこで、我々はUVアクリル樹脂の架橋点を切断できるエステル結合分解法を開発し、これまで評価が困難であったUVアクリル樹脂の重合度や分子量分布に関する情報が得られるようになりました。ここでは、UVアクリル樹脂硬化物について、重合反応に関する情報を得た事例を紹介します。

エステル結合分解法とUVアクリル樹脂の分子量分布評価

エステル結合分解法は、エステル交換反応によりエステル結合のみを特異的に分解する手法です。ある種の触媒を利用することで、室温程度の環境で反応が進行することから、ポリマー主鎖の分子量を保存して架橋点を切断することが可能です。この触媒とメタノールを用い反応させることで、光重合反応で不溶化したアクリルポリマーをポリアクリル酸メチル(pMA)の形で可溶化でき、このpMAの分子量評価を行うことで、光重合反応で生成した樹脂の重合度に関する情報が得られます。

図1 エステル結合分解法の概要

まず、エステル結合分解物の分子量評価の有効性を確認するため、分子量既知のブチルアクリレート系プレポリマーを架橋したアクリルポリマーについて、その分解物のSEC測定を行いました〔図2〕。その結果、プレポリマーと架橋ポリマーの分解物の分子量、分子量分布は一致し、架橋ポリマーの架橋前分子量がpMAとして評価可能であることが確認されました。
次に、光重合架橋アクリルポリマーの分子量評価をポリエチレングリコールジアクリレート重合物を用いて検討しました。光重合開始剤の添加量を変化させて重合した樹脂に対してエステル結合分解を行い、生成したpMAのSEC測定を行いました。その結果、ポリマー主鎖の分子量分布は添加した開始剤量で分子量に差が認められました。
添加開始剤が多いほど生成ラジカル量が多くなり、生成するポリマーの分子量が低下するという原則を支持する結果が得られました。

図2 架橋前後アクリルポリマーのエステル結合分解物の
SEC微分分子量分布曲線
図3 光重合架橋アクリルポリマーのエステル結合分解物の
SEC微分分子量分布曲線

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