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高分子フィルム延伸時の応力と配向性を可視化できます

高分子材料は成形加工時に延伸を行うことで光学特性や機械特性を獲得します。その際、延伸温度や速度の違いによって生じた配向性や応力は製品特性に影響を与えるため、試料延伸時の配向性・応力分布を評価をすることは製品開発にとって重要となります。今回はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを80℃で加熱延伸しながら材料に生じた応力・配向性を顕微ラマンマッピングにて評価した事例を紹介します。

加熱延伸試験中のPETの応力と配向性分布評価

PETの応力評価では1615cm-1(芳香族C=C)のピークシフトを使用します。また、配向性評価では1730cm-1(C=O)のピークに対する1615cm-1(芳香族C=C)のピーク強度比(I1615/1730)を使用します〔図1〕。今回は、80℃加熱環境下でPETフィルムを約1.4倍まで延伸しながら応力と配向性を評価しました。その結果、応力評価において、1615cm-1のピーク位置は延伸に伴って低波数側にシフトし、引張応力が発生する様子が認められました。また、配向性評価においては、I1615/1730のピーク強度比が延伸に伴って高くなる様子が確認できました。さらに、これらの現象は試料全体で概ね均一に生じていることがマッピング像でわかりました。なお、この加熱延伸前後のサンプルをXRDでも分析した結果、円環状シグナルの輝度が変化しており、配向性が61%から79%に増加していると推定されました〔図2〕。このように、試料の延伸時の物性や分子構造変化をその場環境下で動的に評価することで、高次構造変化を複合的に明らかにすることができます。

図1 PETのラマンスペクトル
図2 加熱延伸PETの光学顕微鏡像、顕微ラマンマッピング像およびXRD像

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