広範囲で微量元素の分散・存在状態を可視化できます
製品表面において特性を向上させるための表面処理成分や、逆に不良原因となりうる阻害成分の存在状態は製品機能に大きな影響をおよぼすことが考えられます。その確認手法の一つとしてソリッドネブライザーICP-MSがあります。この手法はパルス幅の短いフェムト秒レーザーとガルバノ光学系を有する前処理装置(ソリッドネブライザー)を備え、微量元素分析が可能なICP/MSを検出器とした装置になります。熱拡散速度よりも速いフェムト秒レーザーでサンプリングを実施することで、微量元素の定量を難溶解性材料に適用できるのはもちろん、精度の高い元素濃度マッピングを局所から広範囲の平面および深さ方向で取得できます。ここでは平面における元素マッピングの事例として、メッセージカードの印字成分を評価した事例を紹介します。
メッセージカードのQRコード印字箇所の元素マッピング
メッセージカードの特定位置(QRコード印字箇所)30mm×30mmをソリッドネブライザーICP-MSでマッピング評価しました〔図1〕。QRコードの印字部分からは、印字塗料(青色素)由来と推定されるCuが印字パターン状にマッピング像として取得されました。また、30mm角の広範囲を評価したにもかかわらず、得られた画像から弊社ホームページアドレスを読み取れるほど高精度に位置情報を取得できました。さらに、ソリッドネブライザーICP-MSでは、微量元素分析で用いられるICP/MSで必要な酸分解や希釈を伴う前処理を行わず、試料を直接アブレーションして評価しているため、低感度のハロゲンであるClも検出できました。こちらもCu同様にQRコードの印刷パターン状でマッピングされていることから、色素成分中に存在することが推定されました。
汎用的な元素分析や表面分析において、試料に含まれる元素情報を得るには、%オーダーの含有量が必要でした。しかし、この分析技術を用いることで、ppmオーダーの含有量元素を高空間分解能のマッピング像として取得可能です。
その他の使用例
- 金属などに含有する微量成分の存在状態の確認
- フィルムなどの表面処理ムラの可視化
- 製品表面への転写成分やコンタミ成分の濃度分布取得