化粧品の耐水性の違いを複合的な分析で明らかにできます
リキッドファンデーションにおいて耐水性は最も重要な機能の一つであり、耐水性を向上させるために、製剤化において様々な工夫が施されています。ここでは、 2種類のリキッドファンデーション(製品A,B)に対して、耐水性に着目して複合的な分析を行うことで、耐水性を制御するパラメータを明らかにした事例について紹介します。
耐水性に着目したリキッドファンデーションの複合解析
2種類のリキッドファンデーション(製品A,B)の耐水性の違いを評価するために、人工皮膚に塗布・乾燥後の試料表面の顕微ラマン分光分析を行い、加湿前後での成分分布の変化を比較しました〔図1〕。その結果、製品Aは加湿前後で成分分布に顕著な変化が見られたのに対し、製品Bではほとんど変化が見られなかったことから、製品Bの方が加湿環境下の耐久性が高いことがわかりました。
次に、製品状態(乾燥前)の内部構造を把握するために、試料を液状のまま急速凍結し、冷却FIB-SEMを用いて断面観察を行いました〔図2〕。
その結果、製品AはO/W型エマルションの水相に着色顔料の無機粒子が分散しているのに対し、製品Bでは、W/O型エマルションの油相に無機粒子が分散していることが確認されました。
また、TOF-SIMSによる分析の結果、製品Bの油相から製品Aでは見られない疎水性のポリジメチルシロキサンが検出されました〔図3〕。
以上のことから、製品Bの高い耐水性は、着色顔料の無機粒子が油相に存在していることや油相にポリジメチルシロキサンを配合することで、外部からの汗水を遮断し、無機粒子の流動を抑制することがポイントであると考えられました。
このように、一つの機能に着目して複合的な分析を行うことで、製品の機能を制御するパラメータを多角的な視点から評価することができます。