ポリ乳酸の劣化状態を深さ方向で確認できます
トウモロコシなど農産物を原料とするポリ乳酸(PLA)は、石油由来プラスチックに替わるカーボンニュートラルな材料として注目されています。今後も利用の拡大が予想されるPLAにおいて、使用環境による劣化の進行度合を把握することは、製品開発を行う上で重要です。ここでは、PLAの深さ方向における劣化評価をした事例を紹介します。
劣化PLAの深さ方向評価
厚み1mmのPLAを85℃85%RH環境下で2週間の劣化促進試験を行ったところ、外観が透明から乳白色になり、手で容易に割れるまでに変化していました〔図1〕。試料全体のGPC測定結果より、試験後のPLAは試験前と比べ、分子量が低下していることがわかりました〔図2〕。
一方、PLAのどの程度の深さまで劣化が及んでいるのかを調べるため、断面方向からナノインデンテーション法を用いて評価しました。その結果、試験後のPLA表面近傍(深さ数100μmまで)は、試験前と比べ、硬度および弾性率が共に低下していることがわかりました〔図3〕。深さ約400μmでは、試験前後で硬さと弾性率は同等であることから、劣化は表面から深さ数100μmまで及んでいると考えられました。
これらの結果より、PLAの劣化は、低分子量化に伴う脆化(軟化)が表面から深さ数100μmに渡り起きていることが考えられました。1つの試料に対して、複数の手法で多角的に状態を評価することで、新たな材料で作製した製品の優劣や使用環境から受ける影響を確認できます。なお、この手法はPLAだけでなく、一般的な樹脂にも適用可能です。