繊維の配向を三次元で定量的に捉えることができます
繊維強化樹脂(FRP)は、加工しやすく、金属に比べて軽量で電気絶縁性や断熱性に優れる等、その材料特性から、車載部品やプリント基板等、多岐に渡って使用されています。一方で、その材料特性は繊維の配向状態により変化するため、繊維の配向を正確に把握し、材料特性と結びつけることが重要となります。ここでは、FRPの一つであるガラス繊維強化樹脂(GFRP)について、三次元画像をX線CTを用いて取得し、ガラス繊維の配向状態を定量的に評価した事例を紹介します。
GFRPのガラス繊維の配向解析
全体を観察した結果、ガラス繊維の向きが場所により大きく異なることがわかりました〔図1〕。そこで、各箇所において、拡大観察を行い、ガラス繊維の配向テンソルを解析しました。その結果、ガラス繊維が箇所A, BではZ軸方向を向くものが多く、一方で、箇所CではY軸方向を向くものが多いことがわかりました〔図2、図3〕。このように、配向テンソル解析では、一つの断面観察だけでは捉えきれない試料内部の三次元構造を定量的に把握できるため、配向制御の指針を得ることができます。配向を制御することで、不均一な反り/収縮の抑制や材料特性の向上など、より良い製品設計に繋げることができます。
配向テンソルとは・・・
繊維の各軸(X,Y,Z)方向にどれだけ配向しているかの割合を示す。
(テンソルXXの値)+(テンソルYYの値)+(テンソルZZの値)=1となる。
指定した軸に対して、「1」 に近いほど、その軸方向に整列していることを表す。