AIを用いてFIB-SEMの三次元像を高解像度化できます
集束イオンビームと走査型電子顕微鏡の複合装置(FIB-SEM)を用いて断面加工とSEM観察を連続的に繰り返すことで、三次元像を取得することが可能です。しかし、この手法で得られる三次元像は、XY面はSEM像の解像度であるのに対し、Z方向の解像度は連続断面像の取得間隔に依存するため、Z方向のみ分解能の低い立体像となる問題点があります。本資料では、FIB-SEMで取得した三次元像にAI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)※を適用することで、Z方向の高解像度化に成功した事例を紹介します。
※ディープラーニング:
AIで活用されている技術の1つであり、多層化したニューラルネットワークを用いた手法。機械が自動的にデータから特徴を抽出することができるため、大量のデータを学習させることで、高精度な解析を行うことが可能。
燃料電池触媒層の三次元像への適用
燃料電池触媒層について、30nm間隔で66枚の連続断面SEM像を取得し、三次元像を構築した結果を図1のaに示します。上述のように、XYの解像度に比べ、Z方向の解像度が低い三次元像となっていることがわかります。このデータについて、解像度の高いXY面の画像データを教師データとしてAIに学習させることで、Z方向を高解像度化することに成功しました(図1,b)。本手法を適用することで、FIB-SEMで取得した三次元像の分解能向上が見込まれるため、画像解析による定量値(例えば、孔の連通度やフィラーの連結度、サイズ分布といった解析)の精度向上が期待されます。なお、本手法は三次元構造が等方的なデータに対して適用可能です。
AIを用いて可能な画像処理、解析
- 機械学習や深層学習を用いたセグメンテーション(対象物の区別、抽出)
- ノイズ除去
- 画像の高解像度化