複合分析により製品の機能に繋がる要因を明らかにします
製品の構成や機能を発現させている要因を明らかにすることは、自社製品のさらなる機能性の向上や、開発スピードの加速につながります。今回は耐久性の異なるナイロン繊維について複合的に分析し、多角的な観点から機能に繋がる要因を明らかにした事例について紹介します。
耐久性の異なるナイロン繊維の複合分析
見かけ上違いがない製品Aと製品B(高耐久性付与品)について、各装置で分析した結果を表にまとめました〔図1、表1〕。OM観察から、どちらの製品も繊維が複数集まったマルチフィラメントであり、製品Bの方が直径が大きいことが確認されました。主組成はいずれも 6-ナイロンであり〔図2〕、その硬さや弾性率も同等の値を示しており、主成分の組成、物性に大きな違いは認められませんでした。
一方で、ラマン測定からは製品Bにのみ、無機カーボンが検出されました〔図3〕。さらに、ESCA測定から表面の元素比率を算出するとSi元素比率(有機シリコーン由来と推定)が製品Bの方が高い値を示しました〔表2〕。以上のことから、高耐久性が付与された製品Bは直径が大きく、硬度の高いカーボンが配合されており、さらに表面のシリコーン量が多いことがわかりました。このように、複合的に分析を行うことで、製品の機能に繋がる要因を多角的な観点から評価することができます。
OM: 光学顕微鏡
ESCA: X線光電子分光分析装置
ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析装置
FT-IR: フーリエ変換型赤外分光計
FIB: 集束イオンビーム加工装置
µ LR: 顕微レーザーラマン分光光度計
TOF-SIMS: 飛行時間型二次イオン質量分析装置
TEM: 透過型電子顕微鏡