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結晶中の原子空孔型欠陥の濃度がわかります

材料中に存在する原子空孔型欠陥は、熱伝導度や電気抵抗等の諸物性に影響をおよぼすため、原子空孔型欠陥を測ることは、これらの物性制御に役立つ情報を得ることにつながります。陽電子消滅法は、陽電子の寿命が材料中の空孔と相関することを利用して、原子空孔型欠陥の種類や濃度を評価できる分析手法であり、単一原子空孔であっても高感度かつ非破壊で測定可能です。一例として、セラミックスとして高い熱伝導率を有する窒化アルミニウムについて原子空孔型欠陥の評価を行った内容を紹介します。

セラミック材料中の原子空孔型欠陥

窒化アルミニウムの陽電子寿命スペクトルは図に示すように、完全結晶由来の短寿命成分(132 ps)と空孔型欠陥由来の長寿命成分(約200 ps以上)が重なって測定されます。高熱伝導率サンプルと低熱伝導率サンプルの2種類について測定を行った結果、寿命値は表に示すように解析され、高熱伝導率サンプルは低熱伝導率サンプルより完全結晶由来の消滅成分が多く、空孔型欠陥由来の消滅成分が少ないことがわかりました。

解析値から、トラッピングモデル(陽電子の欠陥への捕獲と消滅を反応速度論で記述した理論)に基づいて試料中の原子空孔型欠陥の濃度を計算すると、高熱伝導率サンプルでは 2.08×10-6、低熱伝導率サンプルでは 2.25×10-6 と求まり、高熱伝導率サンプルは低熱伝導率サンプルと比較して空孔型欠陥が1割ほど少ないことがわかりました。

図 窒化アルミニウムの陽電子寿命スペクトル
表 空孔型欠陥濃度の解析結果

その他の応用

  • 各種分離膜(ガスバリア膜、RO膜、NF膜)の空孔サイズ評価および不純物阻止特性、透過量との相関
  • 各種ポリマー材料の自由体積評価および熱物性、力学物性との関係評価
  • Low-k層間絶縁膜の空孔サイズ評価および誘電率、 絶縁特性、膜強度等との相関
  • ゼオライト等メソポーラス材料の空孔サイズ評価

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