着色の原因成分の構造を特定します
高分子材料の外観不良の1つとして変色があります。変色の要因は、材料のポリマーや添加剤由来の他に、材料の使用環境下で、外部から着色物の混入も念頭に置く必要があり、原因特定には着色成分の同定が重要となります。LC/FT-MS (液体クロマトグラフィー/電場型フーリエ変換質量分析計)では、吸光度検出器(DAD)を併用することで可視領域の着色に起因する成分の確認と各成分の精密質量から元素組成を算出することができます。ここでは、赤インキがテープに混入した試料をDADとFT-MSを用いて構造解析を行った事例を紹介します。
テープに混入した赤色成分の構造解析
赤く染色されたテープ部から溶剤抽出を行い、得られた抽出液のHPLCクロマトグラムを図1に示します。赤色成分の吸収波長(500nm)でピーク(ピーク1,2)が観測されました。これらのピークの精密質量と部分構造の情報をFT-MSで取得し、ピーク1のマススペクトルを図2に示しました。その結果、ピーク1の分子イオンの質量としてm/z=645.2486が観測(プロトン付加分子,[M+H]) +)され、その元素組成とMS2解析からSolvent Red 18相当品と推定されました。また、ピーク2の成分についても同様に解析を行い、それぞれ図3に示した構造が推定されました。
その他の応用
- 染料の構造分析
- フィルムや成型物中の添加剤の劣化成分の構造同定