多層薄膜中の微量成分の存在状態や組成が評価できます
フィルム製品の製造工程において、変色等の不良が問題となるケースがあります。しかしながら、近年の多層薄膜化に伴い不良は内部に存在しているだけでなく、原因となる成分は非常に微量なため、詳細分析が困難な場合がありました。そこで、検出感度の高いTOF-SIMS測定と、アルゴンガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)エッチングを併用した深さ方向分析によって、不良の存在箇所および原因物質を解明した事例を紹介します。
多層薄膜フィルムの変色原因分析
PET基材(2μm)/アクリル粘着層①(1μm)/アクリル粘着層②(5μm)/下塗り層(0.1μm)/PET基材(20μm)構成の多層薄膜フィルム〔図1〕に大きさ200μmφの黒色のシミが認められました〔図2〕。そこで、フィルム表面から内部にかけてTOF-SIMSによる深さ方向分析を行い、存在箇所と成分の特定を行いました。
TOF-SIMSデプスプロファイルから〔図3〕、黒色のシミは主にアクリル粘着層②に存在し、その成分は黒色染料(Solvent black34相当)であることがわかりました。また、その厚み方向に濃度分布があることもわかりました。
この他にも、有機半導体やレジスト製品といったさまざまな薄膜中に含まれる微量成分の濃度勾配や拡散状態を評価可能であり、製品設計やプロセス改善に有用です。
※フィラー等の無機物を含むと評価が難しい場合があります