MALDI-TOF MSによる分子量分析が可能です
マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS:Matrix assisted laser desorption/ionization-time of flight Mass Spectrometry)は、試料分子をほぼ分解することなくイオン化して質量分析を行う方法です。この方法により、これまでMSが不得意としてきたタンパク質などの生体高分子や合成高分子についても、分子量情報を反映するMSスペクトルを微量な試料からでも比較的に容易に得ることが可能です。
ポリスチレンの分子量測定
標準ポリスチレン{重量平均分子量(光散乱法)=1.81×104}について、MALDI-TOF MSを用いて分析した事例を紹介します。スチレンユニット分子量に相当する104u間隔で、ブチル基末端のポリスチレンの分子量情報が得られていることがわかります。 このように、単一(あるいは2種類以上)の構成ユニットの繰り返し構造からなる合成ポリマーにおいても、分子量情報(~105)を得ることが可能です。ただし、分子量分布の広いポリマーの場合、正しい分子量分布を得られないことがあります。
光安定剤(HALS)の構造解析事例
高分子材料の光劣化を抑えるために添加されているヒンダードアミン系光安定剤(HALS;Hindered Amine Light Stabilizer)は、溶解度が低く、溶媒抽出(LC/MSなど)では分析困難なものが多く存在しています。このような材料には、MALDI-TOF MSによる分析が有効です。図2に、類似骨格を有し揮発性の低い成分を含むHALS混合物について、MALDI-TOF MS分析を行った結果を示します。得られたスペクトルの分子量情報より、3種類のイオン種が確認されました。このように、類似骨格を含む混合物についても同定が可能です。