難溶性樹脂の組成分析が可能です
近年、様々な工業製品において、軽量化・低コスト化の観点から、樹脂材料が注目されています。例えば、自動車業界では、一部部品を金属から樹脂に代替することで軽量化が行われており、そのような材料には軽さと共に耐久性、耐熱性や耐油性が求められています。これらの樹脂製品は、耐熱性等を付与するため、硬化後は加熱・溶媒に対して難溶性なものが多く、詳細な組成分析は不可能なものがほとんどでした。しかしながら、これら樹脂の開発を行う上で、硬化物の組成情報を知ることはとても重要です。ここでは、難溶性樹脂の組成を明らかにするための分析事例を紹介します。
高温メタノール分解法によるUV硬化型樹脂(硬化後)の組成分析
自動車部品や工業製品に使用されている樹脂は、ほとんどの場合が難溶性の硬化物であり、そのままの状態で詳細な組成分析を行うことは困難です。このような場合でも、縮合系のポリマーには高温メタノール分解法が有効です。
高温メタノール分解
高温メタノール分解法はエステル結合などの縮合結合部分を選択的にモノマー単位に分解する手法です。分解物の回収は容易であり、溶媒に可溶であるため、GC/MS測定やFT-NMR測定が可能となります。さらに、分解反応条件を最適化することでモノマー組成比を算出することも可能です。
UV硬化型樹脂硬化物の高温メタノール分解
UV硬化型樹脂の高温メタノール分解後の溶液について、1H NMR測定を行いました。エステル結合やウレタン結合を有する化合物を分解すると、カルボン酸成分やイソシアネート成分がメチル化され、アルコール成分はアルコールとして検出されます〔図1〕。その結果、得られた1H NMRスペクトル〔図2〕より、IP、AD、NPG、MPD、HXDIが検出されました。その他にも、構造異性体の判別や、積分強度比から組成比の算出が可能です。
このように、硬化物の分析手法は限られていましたが、アクリレート系UV硬化型樹脂の硬化物は高温メタノール分解法を活用することにより、組成比を含めた詳細構造を明らかにすることが可能です。