トナーの形態・内部構造の観察が可能です
粉体(粒子)は、その形状から機械的取り扱いが容易であったり、液中に均一分散が可能であったりとの理由から、多方面で使用されています。一例として、レーザープリンタや複写機などに使用されるトナーがあります。トナーには、樹脂、色材やその他添加物など多くの材料が添加されており、トナー粒子のサイズや形状、内部の添加剤の分散状態が印字画質に大きな影響を与えます。これらの形態を把握する手法として、SEMやTEMによる観察が極めて有効です。
トナー粒子のSEM、TEM観察
有機・無機複合材料であるトナー粒子には、主に粉砕法トナーと重合法トナーがあり、それぞれの製法から、粒子形状に大きな違いが有ります。そこで、両トナーの粒子サイズや形状を確認するために表面SEM観察を行いました〔図1A,図2A〕。その結果、粉砕法トナーは、粒子が不定形であるのに対し、重合法トナーは球形であることがわかりました。一方、トナーに添加されている着色料や樹脂の状態を調べるには断面TEM観察が有効です。しかし、粉末であることや低温で溶けることから、内部の微細構造をTEM観察により評価する場合には、試料調製(薄膜化)に工夫が必要となります。弊社では、各種染色処理、包埋処理を使い分けることにより、トナーの断面TEM観察を可能にしています。図1B, 2Bに粉砕法トナーと重合法トナーの断面TEM像を示します。これらのTEM観察結果から、トナー内部におけるカーボン粒子やワックス成分の分散状態が異なることが確認され、特に重合法トナーにおいてはワックス成分がカプセル化されていることが明らかとなりました。