ナノメートルオーダーの内部形態観察が可能です
混ざらない複数の液体の分散系であるエマルションは、食品、化粧品、工業品など、様々な用途で使用されています。身近な例としては、マヨネーズ、乳液や水溶性接着剤、粘着剤であり、目的や特性に応じて分散状態や添加剤など、さまざまな工夫がされています。これらの特性を理解するためには、分散状態をはじめとした内部形態を観察することが重要となります。ここでは、エマルション系試料の内部形態をTEM観察した事例を紹介します。
水性接着剤の内部形態観察
水を溶媒としている、水溶性接着剤の場合、水を使用する通常の超薄切片法では膨潤が生じるため良好なTEM試料の作製ができません。このような場合、弊社で開発した水を使用しない「ドライ切削法」が極めて有効です。図1にドライ切削法により試料調製した水溶性接着剤の断面TEM像を示します。観察の結果、大きく異なるサイズ(数μmおよび数10nm)のエマルション粒子が混在していることが確認されました。
エマルション系粘着剤の断面観察
エマルション系粘着剤では、粘着物性向上のために粘着付与剤(タッキファイヤー)が添加されています。粘着剤内部でのタッキファイヤーの存在状態は、染色+超薄切片法によるTEM観察で観察が有効です。エマルション系粘着剤(粘着剤①、②)の内部形態をTEM観察した結果、粘着剤①の内部には、数100nmサイズの球形タッキファイヤーが観察されましたが〔図2,A〕、粘着剤②の内部には同様な形態はほとんど認められず、タッキファイヤーはマトリクスポリマーと相溶していることがわかりました〔図2〕。