本文へリンク

熱伝導性の違いで高分子のミクロ相分離構造が観察できます

高分子ミクロ相分離構造は、高分子の力学的、熱的、光学的性質を決定する重要なファクターです。その観察には重金属染色処理を施した試料を電子顕微鏡で観察するのが一般的です。しかしながら、重金属染色処理は、染色剤が劇毒物であること、染色条件を決めるため熟練度が必要であること、染め分けられた成分の同定が困難であることなどの問題があります。そこで、近年、発展の著しい走査型プローブ顕微鏡(SPM)から派生した走査型サーマル顕微鏡(SThM)法による高分子ミクロ相分離構造の観察事例を紹介します。SThMは熱伝導性の違いを可視化する顕微鏡法です。

PMMA/PStの相分離構造観察

試料はポリメチルメタクリレート(PMMA) /ポリスチレン(PSt)を相分離させたものです。SThMではカンチレバーを加熱した状態で試料に接触させ、試料側に逃げる熱量を補償するようにフィードバックをかけて、熱伝導性の差異をイメージングします。しかし、ポリマーのような熱伝導性が低く、しかも、種類による違いもほとんどない材料では、熱伝導性の差異を明瞭なコントラストとして得るのは困難です〔図1,2〕。そこで、当社では試料を冷却し、カンチレバーと試料との熱ギャップを大きくすることで、ポリマーのように熱伝導性の差異が小さい材料でも、明瞭なコントラストで相分離構造を観察することができるようになりました〔図3,4〕。 用いた試料の熱伝導率はPMMAが0.20W/m・K,PStが0.15W/m・Kであり、その差はわずか0.05W/m・Kしかありませんが、図4に示すように明瞭なコントラストが得られました。しかも、今回のように材料の熱伝導率が既知のものであれば、SThMで得られたコントラストから、マトリックスがPMMA(熱伝導率が高い)、ドメインがPSt(熱伝導率が低い)ということが判断できます。

図1 形状像(100μm□)真空下、24℃
図2 SThM像(100μm□)真空下、24℃
図3 形状像(100μm□)真空下、-120℃
図4 SThM像(100μm□)真空下、-120℃

注)SThM像では暗い領域が熱伝導率が高く、明るい領域が熱伝導率が低いことを示しています。

ユーザー登録がお済みの方

   

PDFをダウンロードするにはユーザー登録が必要です。

お問い合わせ・ご相談

高分子分析、形態観察、表面分析、組成分析など、評価・分析に関するご質問・ご依頼はお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ戻る