高分子の自由体積が測れます
材料中の空孔はしばしば物質透過物性,力学物性,熱物性,光学物性等に関連するため、空孔を測ることはこれらの物性制御に役立つ情報を得ることにつながります。高分子材料の場合、陽電子消滅法では非晶領域の自由体積に相当する分子間空隙がサブナノ空孔として観測されます。ここでは、エポキシ樹脂とシリカによる有機-無機ハイブリッド樹脂の空孔サイズを調べた事例についてご紹介します。
エポキシ-シリカハイブリッド樹脂におけるシリカ含有率と自由体積との関係
陽電子は材料中の空孔が大きいほど寿命が長くなる性質があります。図1に種々のシリカ含有率におけるハイブリッド樹脂の陽電子寿命スペクトルを示します。その結果、シリカの含有率によって陽電子寿命スペクトルの傾きが異なることが確認されました。 このスペクトルを解析し、試料中の空孔径を求めた結果を図2に示します。その結果、シリカ含有率が増加すると空孔径が大きくなることがわかります。これは、図3に示すように、シリカフィラーがエポキシ樹脂の間に入り込むことによって、エポキシ分子同士が接近し難くなるため、自由体積が増大したものと予想されます。
その他の応用
- 各種分離膜(ガスバリア膜,ナノろ過膜,限外ろ過膜など)の空孔サイズ評価
- 各種高分子材料の自由体積評価および力学物性、熱物性との関係評価
- Low-k層間絶縁膜の空孔サイズ評価
- ゼオライト等メソポーラス材料の空孔サイズ評価