ケイ素材料の構造がわかります~シリカの化学結合状態解析~
ケイ素材料にはシリカのような無機系のものと、シリコーン樹脂のような有機系のものが存在し、それぞれ幅広い用途で使用されています。シリカはゴムに添加することで優れた補強性を発揮します。その際、表面のシラノール基や表面処理によって結合している有機官能基など、シリカの表面状態が物性を左右します。固体NMRは無機物,有機物に関わらず、固体状態のまま測定でき、分子および原子レベルで構造解析を行うことが可能であり、ケイ素材料の構造決定に威力を発揮します。ここでは、固体29Si NMRを用いて未修飾のシリカの化学結合状態を調べた事例についてご紹介します。
シリカの化学結合状態解析
図1にシリカの固体29Si NMRスペクトルを示します。シリカ中のケイ素原子には水酸基と結合していないケイ素(Q4)および1,2個の水酸基と結合しているケイ素(Q3,Q2)が存在します。そして、NMRスペクトル上ではこれらのケイ素由来のピークが異なる位置に検出されますが、ピークがブロードであるため、一部重なって観測されます。そこで、波形分離を行い、各ピークの面積値を求めることで、ケイ素の化学結合状態を調べることが可能となります。図1の左上部にシリカ由来のピークの波形分離結果を示しますが、Q2:Q3:Q4はおよそ2:24:74(mol%)であることがわかりました。また、この結果からシラノール(Si-OH)基量を見積もることが可能です。このように、固体NMRはケイ素材料の構造解析を行う手段として有効です。
その他の応用
- シリカ粒子の化学修飾状態解析
- シリコーン樹脂の構造解析,樹脂中の未反応官能基の定量