ナノ~ミクロンオーダーの磁区構造がわかります
磁区構造を理解することは磁性材料や磁気デバイスを設計・開発するためには必要不可欠です。磁区構造を観察する手法はさまざまですが、ここでは、走査型プローブ顕微鏡の1つである磁気力顕微鏡(MFM)を紹介します。MFMは分解能が高く、サンプリングも容易です。さらに、加熱や真空など、環境を変化させた条件下での測定ができる特徴があります。
ハードディスクのMFM観察
試料はパソコンから取り出したハードディスクです。形状像〔図1〕からはテクスチャー構造と呼ばれるスジ状の凹凸構造が確認できました。MFM像〔図2〕からは記録ビットが観察されました。
市販ネオジム磁石のMFM観察
試料は市販のネオジム磁石(ホビー用)です。事前に熱処理を施し、熱消磁状態にして観察しました。磁化容易軸垂直面のMFM像〔図3〕からは迷路模様の磁区構造が認められ、一部、磁化容易軸方向からずれた結晶粒の存在が確認できました(白矢印)。磁化容易軸平行面のMFM像〔図4〕からはストライプ模様の磁区構造が明瞭に観察できました。磁化容易軸平行面のMFM像からは隣接結晶粒同士の磁気的結合の様子がわかりました。
*磁化容易軸:結晶磁気異方性をもつ磁性体において、磁化されやすい結晶方位のこと。
その他の応用
- ネオジム磁石の熱消磁過程のその場観察(加熱状態での観察)
- 磁気ヘッドなどの磁性材料