フッ素系高分子の構造が詳細にわかります~微量成分の特定~
代表的なフッ素系高分子であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、化学的に安定で耐薬品性に優れた材料です。また、溶融粘度が高く、一般的な成形方法が使用できないため、改質する目的で他のモノマー成分を共重合させたものもあります。しかし、その量は微量であり、どのようなモノマー成分が加えられているのかわからない場合や、製品間でモノマー成分の含有量の差を調べることが困難な場合があります。固体19F NMRは検出感度が高く、このような微量成分の特定や定量的な評価を行うのに適したツールです。ここでは、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルのモノマー組成比を調べた事例について紹介します。
テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルのモノマー組成比
試料①の固体19F NMRスペクトル(図1上段)からは、δ=-122ppmにテトラフルオロエチレンユニット(TFE)に由来するピークが主に検出されます。スペクトルの縦軸を拡大すると(図1中段:×16)、パーフルオロアルキルビニルエーテルユニット(PFA)に由来するピークも確認できます。また、これらのピーク位置から、パーフルオロアルキル基(Rf)はヘプタフルオロプロピル基(-CF2-CF2-CF3)であることがわかりました。さらに、TFEとPFAのピーク面積比より、PFAの含有量は1.5mol%と算出されました。PFA含有量が少ない試料②についても、縦軸を拡大すればPFA由来のピークが識別でき(図1下段:×256) 、その含有量はおよそ0.01mol%と見積もられました。このように微量のモノマー成分であっても、特定が可能です。
その他の応用
- フッ素系高分子中の結晶成分、非晶成分、異種結合量などの高次構造解析
- 電子線やγ線照射によるフッ素系高分子の劣化,架橋構造解析