粘着特性の違いをポリマーの分岐情報から評価します
粘着剤ポリマーは、ポリマー分子内に適度の分岐構造を有すると、粘着特性を左右する粘着力と凝集力のバランスが良好になることが報告されています。よって粘着剤の特性は、ポリマーの分岐構造をコントロールすることにより、制御が可能になります。ポリマーの分岐度を求める方法はサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)の検出器として光散乱検出器(LS:Light Scattering)を用いたGPC-LS測定法が一般に広く用いられます。
アクリル系粘着剤ポリマーのGPC-LSによる分岐評価
溶液重合や塊状重合によって得られたアクリルポリマーをGPC-LSで測定し、絶対重量平均分子量(Molar Mass)に対して回転半径(R.M.S.Radius)をプロットした結果を図1に示します。塊状重合品は溶液重合品に比べて、さらに塊状重合品は重合温度の高いものの方が同一分子量成分の回転半径が小さく、分岐が多い構造になる(プロットの傾きが小さくなる)ことが確認されました。重合方法や重合温度の重合条件を変更することによって得られた粘着特性の違いが、単にポリマーの分子量,分子量分布の変化によるものなのか、ポリマーの分岐度の変化によるものなのかを検討する際、GPC-LSで得られる情報は非常に有力なものとなります。
この分岐の程度をgM[=(分岐ポリマーの回転半径)2/直鎖ポリマーの回転半径)2]という指標を用いて数値化することもできます。gM値は分岐が多いほど小さい値になります。上図の場合、溶液重合55℃品を直鎖ポリマーと考えると、塊状重合90℃品はgM=0.74、塊状重合110℃品はgM= 0.64と算出され、塊状重合110℃品のほうが分岐が多いことを示しています。GPC-LS測定で得られた分岐情報と粘着特性を比較することにより、粘着剤の設計指針に寄与することが期待されます。
その他の応用
- 粘着剤ポリマー,水溶性ポリマー,分散剤などの絶対分子量,分子量分布測定
- 通常のカラム測定では測定困難な極性基を有するポリマーの絶対重量平均分子量[絶対Mw]測定(バッチ測定)