シリコーンの微細構造が分析できます
合成ポリマーにおいて構成ユニットが同一であっても微細構造(末端構造など)の違いにより、機能の発現が異なることがあります。FT-IRやNMRでは情報の得にくい、ポリマー中の微細構造を調べる手法として、MALDI-TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法)は有効な手法です。ここでは、工業材料の離型剤やシール材として幅広く用いられているシリコーンについてMALDI-TOF MS法により、末端構造を分析した事例を紹介します。
シリコーンの末端構造解析
2種類のシリコーン(シリコーンA,シリコーンB)のMALDI-TOF MSスペクトル〔図1〕からは、各ピークの間隔がジメチルシロキサンユニットに相当する74uのイオン種(△,○)が検出されました。このことからイオン種(△,○)はポリジメチルシロキサンであることが分かります。またその質量より、m/z 1897.4(イオン種△)のピークは、両末端にトリメチルシリル基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンに由来するものであり、 m/z 1883.3(イオン種○)のピークは、環状ポリジメチルシロキサンに由来するものであることが分かりました。このようにシリコーンの微細構造や質量範囲を分析することによって、シリコーンの異同識別やコンタミ原因の特定につなげることができます。
その他の応用
- 界面活性剤の(末端構造を含む)分子構造解析
- UV硬化型樹脂(オリゴマー)の分子構造解析
- エポキシ樹脂,フェノール樹脂(未硬化物)の分子構造解析
対象試料
- 分子量10,000以下の不揮発性有機,高分子化合物(分子量10,000以上であっても分子量測定は可能)