異物の詳細化学構造がわかります
通常異物分析で最も良く用いられる手法は、μFT-IR法やSEM-XMA法などですが、前者は成分の官能基情報を後者は元素情報を得る手法であるため、これらの手法のみでは詳細な構造決定までは至らない場合があります。この場合、熱分解・反応熱分解GC/MS法により、より詳細な構造情報を得ることが出来る場合があります。
ここでは、ゴム部材の表面付着異物(脂肪酸金属塩)について、反応熱分解GC/MS法により、脂肪酸部分の詳細な構造までが確認できた事例を紹介します。
ゴム部材の表面付着異物の分析
ゴム部材の表面に付着していた白色異物について、μ-FT-IRとSEM-XMAにより分析した結果、異物は長鎖脂肪族カルボン酸の金属塩で、金属成分はZnであることが判明しました(下図左側分析結果)。しかしながら、この結果では長鎖脂肪族カルボン酸成分の構造までは明らかに出来ません。
そこで反応熱分解法により、脂肪酸金属塩成分を脂肪酸エステル(メチルエステル)に変えてGC/MSにより分析した結果、パルミチン酸(少)とステアリン酸(主)のメチルエステルが検出されました(下図右側分析結果)。このことからゴム部材の表面付着異物の組成は、ステアリン酸亜鉛(少量のパルミチン酸亜鉛を含む)であると限定できました。