極薄付着物の組成分布が1ミクロンレベルでわかります
偏光板やFPCなどのエレクトロニクス関連製品においては、極めて薄い汚染物も外観異常として品質上問題となります。汚染物の発生源を究明するためには化学組成を調べることが必要です。飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)では、他の手法では分析が困難なnmオーダーの厚さの汚染物の化学組成を調べることが可能です。
ガラス表面の薄膜状付着物のTOF-SIMS分析
液晶パネル用ガラスの表面に見つかった薄膜状の微小な付着物〔図1〕についてTOF-SIMS分析を行ない、組成や分布を調べました。全イオン像〔図2〕には付着物部A, 周辺部B, 正常部Cが確認されました。A部の正2次イオン質量スペクトル〔図4〕を解析した結果、ポリエチレングリコール(PEG)が同定され、洗浄に使用された界面活性剤成分が付着していることが判明しました。一方、周辺のB部ではガラス由来のSi+, Al+に加えて、PEG由来のイオン種C2H5O+も認められました。 このことは、付着物から周辺に向かってPEGが拡散していることを示し、この様子はC2H5O+のイオン像からも明瞭にわかります〔図3〕。このようにTOF-SIMSを用いると極めて薄い汚染物の組成と分布を同時に明らかにすることができます。