極表面成分の化学状態まで定量できます
粘着テープの利点の一つとして簡単に剥がせることが挙げられますが、剥離した後、粘着剤成分の被着体への汚染がしばしば問題となります。汚染成分を調べるには、X線光電子分光装置(ESCA)や飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いた表面分析が有効です。ESCAは汚染量の定量的な評価に、TOF-SIMSは汚染成分の特定に力を発揮します。これらの分析結果を元に低汚染性の粘着テープの開発につなげることが可能となります。
ESCAによるガラス表面の粘着剤転写量の分析
粘着テープを貼付・剥離したガラス表面をESCAで分析しました。その結果、テープ剥離後には、ブランクと比べて炭素Cの比率が増加し、粘着剤成分がガラス表面に付着していることが確認されました〔表1〕。さらにCの化学結合状態を解析するとテープ剥離後には、COO結合の割合が高くなっていることが判りました〔図1〕。
TOF-SIMSによるガラス表面の粘着剤転写成分の定性分析
粘着剤にはポリマー、添加剤など多くの成分が含まれています。そこで、テープ剥離後のガラス表面の汚染成分を特定するために、TOF-SIMS分析を行いました。その結果、テープ剥離後にはC3H3O2-およびC4H7O-(m/z 71)、C4H9O- (m/z 73)が特異的に検出され〔図2〕、粘着剤ポリマーのブチルアクリレート(BA)成分がガラスに付着していることが判りました〔図3〕。このように、TOF-SIMSでは付着物の有機組成を調べることができるため、被着体に移行しやすい成分を特定することができます。