重合開始剤の組成および含有量がわかります
液晶パネルのシール剤や接着剤など、速硬化,精密加工用途として紫外線(UV)硬化型樹脂(あるいはUV硬化+熱硬化のハイブリッド型)が使用されることが多くなっています。一般的に、 UV硬化型樹脂は①オリゴマー,②(多官能)モノマー,③光開始剤,④フィラー等、多成分が含まれており、これらの組成分析は、通常、分取GPCを用いて分子量ごとに成分分離を行った後、それぞれの分画について構造決定を行います。ここでは光開始剤に注目し、その組成分析手法についての事例をご紹介します。
ラジカル重合型光開始剤の組成分析
ラジカル重合型光開始剤は、主にアクリル系樹脂の硬化に使用されますが、化合物ごとにUVスペクトルに大きな特徴があります。したがって、PDA(フォトダイオードアレイ)検出器を用いたHPLCによる分析を行うことで、これらの種類を特定できます。図1に10種類のラジカル重合型光開始剤をHPLCを用いて一斉に分析した結果を示します。
①Irgacure 2959,②Darocur 1173,③Irgacure 184,④Kayacure BP,⑤Darocur 1116,⑥Irgacure 651,⑦Irgacure 907,⑧Kayacure CTX,⑨Kayacure DETX-S,⑩Irgacure 819 の10種類の開始剤が、検出下限約100ppbと、非常に高感度で測定できます。
カチオン重合型光開始剤の構造解析
UV硬化型接着剤に含まれているスルホニウム塩系光開始剤をTOF-SIMSを用いて分析しました。開始剤は、その他の含有成分とは極性が大きく異なることから、溶媒抽出により選択的に分離することが可能です。分離した後、正二次イオンスペクトルを測定した結果、 m/z=1031にイオンが検出されたことから、アニオンであるSbF6-が一つ欠落した、 [(C44H44O8S3)(SbF6)]+イオンであるものと推察されました〔図2,3〕。
カチオン重合型光開始剤には、スルホニウム塩以外にも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等、様々な種類のものがありますが、これらは全てイオン性物質であることから、多くの場合、質量分析を行うことで、その構造を明らかにすることが可能です。