微小部の結晶構造や有機薄膜の配向様式を高精度に解析できます
電子デバイスなどの機能材料に対する微細化、高集積化の要求が高まり、高性能な成膜装置による薄膜化が進められています。このような試料に対しXRDの高感度2次元検出器を用いた測定は非常に有効です。この検出器の特徴は、1)散乱強度を稼ぎ、より高感度にデータを取得できる、2)粗大粒子や集合組織の有無に関わらず、ピークを逃すことなく検出できる、3)結晶状態(ランダムな多結晶、選択配向、粗大粒子、単結晶など)を瞬時に把握し、信頼性の高い解析ができる、などさまざまです。ここでは高感度2次元検出器を最大限に活用した解析事例をご紹介いたします。
デバイス上の配線部分の同定解析
基板上の配線部分に対して、微小部のX線回折測定後、同定分析を行った事例を 紹介します。レーザー顕微鏡で測定箇所を決定した後〔図1〕、開孔径φ50μmのコリメーターからX線を照射しました。2次元回折像を扇型積分するため、スポット状に現れたピークを見落とすことなく、1次元回折パターンに変換できます〔図2〕。解析の結果、配線部分には銅の粗大粒子が存在することがわかりました〔図3〕。
有機薄膜試料の配向評価
成膜方法が異なる厚み数10nmの有機薄膜の配向評価を行った事例を示します。測定の結果、キャスト膜の2次元回折像では、100反射は環状に現れたことから、a 軸が無配向であることがわかりました〔図4〕。他方、摩擦転写膜では、100反射が弧状に現れたことより、a 軸は面内に配向していることが明らかになりました〔図5〕。このようにXRDの2次元回折像を比較すると、有機薄膜層の配向様式の違いを一目瞭然に確認することができます。
その他の応用
- 銅薄膜(厚さ数10nm)の残留応力の評価
- 無配向、一軸配向試料の結晶化度の評価