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深さ方向分析が低損傷で行えます

ESCA(XPS)を用いた有機材料の表面クリーニングおよび深さ方向分析は、従来のArイオンスパッタでは事実上不可能でしたが、 C60イオンスパッタを用いることで可能となりました。ここでは、ポリエチレンテレフタレート(PET)をArイオンおよびC60イオンでスパッタし、深さ方向分析した事例をご紹介します。

ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの深さ方向分析

PETフィルムの深さ方向分析を行った結果を図1に示します。C1sスペクトルにおけるPET構造由来のC-C, C-O, COO, π-π*(主に芳香環の存在を示唆)のピーク変化に着目すると、Arイオンスパッタではダメージの影響でスパッタ直後にO系官能基に由来するピークがほとんど検出されていません〔図1上〕。それに対し、C60イオンスパッタでは試料表面から深さ100nmスパッタ部まで、スペクトルに大きな変化がなく〔図1下〕、 C60イオンスパッタは試料損傷の少ない手法であることが判ります。このことは、ピーク分離を行い、表面から深さ100 nmまでの各官能基の存在比率を求めた図2からも示唆されます。

図1 各深さ水準におけるC1sスペクトル
図2 C60イオンスパッタによるPETのデプスプロファイル

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